店のホームページにメニューを載せたら、お客様から電話があった。「子どもに卵のアレルギーがあるんですが、アレルギーの表はありますか」。表は作っていない。日替わりの定食もあるし、仕入れ先が変われば使う調味料も変わる。何か載せないといけないのか。
この記事は、その判断のためのものです。根拠は、消費者庁のアレルギー表示の案内と、外食事業者向けの「外食・中食におけるアレルゲン情報の提供に向けた手引き」(以下、手引き)です。
結論から書きます。飲食店の料理には、アレルギー表示の義務はありません。 ただ、ホームページに何かを書くなら、その前に1つ決めることがあります。店として、アレルギーの情報を管理するのか、しないのか、です。
飲食店に、表示の義務はない
アレルギーの表示が法律で義務になっているのは、容器包装に入った加工食品です。三重県の案内には、飲食店の料理のようにその場で調理して出すものには表示の義務はない、と書かれています。東京都の保健所の案内も、飲食店で出す食品にアレルギー情報の提供は義務付けられていないとしています。
義務が無い理由も、外食業界の団体(日本フードサービス協会)が書いています。同じ厨房でいろいろな料理を注文に応じて作るため、正確さを保つのが難しい、ということです。
義務の対象になっている品目(特定原材料)は、2026年4月1日にカシューナッツが加わって、次の9品目です。
えび、かに、くるみ、小麦、そば、卵、乳、落花生、カシューナッツ
このほかに、表示が勧められている「特定原材料に準ずるもの」があります。品目は見直されることがあるので、書く前に消費者庁の最新の一覧で確かめてください。手引き本体は2023年3月の修正版で、品目数がその時点のまま(義務7品目)になっています。
最初に決めるのは「管理するか、しないか」
手引きは、店の選択肢を二者択一で示しています。アレルギーの情報を管理するか、しないか。
管理するというのは、メニューごとに、使っている食材と調味料の原材料まで把握し、変わったら更新し続けることです。調味料や冷凍の半加工品は原材料がいくつも入っているので、袋の表示や仕入れ先の規格書まで確かめることになります。
ここで手引きは、はっきり書いています。正確な情報を把握できないなら、安易にアレルギー情報を出すべきではない。 曖昧な情報は、出さないよりも誤食を招く、という考え方です。そして、管理できない場合はそのことを前もって伝えるのも店の責務だ、としています。
日替わりがあり、仕入れ先がよく変わり、厨房を1人か2人で回している店なら、当社は「管理しない」を選び、そう明記することを勧めます。中途半端な表を載せるより、事故の危険が小さいからです。
固定のメニューが中心で、原材料を把握できている店なら「管理する」でかまいません。ただし、更新を続ける手間を引き受けることになります。
管理しない店が、ホームページに書く文
管理しないと決めた店は、そのことをホームページのメニューのページと、店内(レジ横や入口)に書きます。手引きに載っている文の例はこうです。
- 当店では提供するメニューに関して食物アレルギー管理をしていません。
- 当店ではお客様の食物アレルギーに対応したメニューをご用意しておりません。
店のホームページなら、これに来店前の連絡先を足すと、お客様が判断しやすくなります。たとえば次のような形です。
当店では、メニューごとの食物アレルギーの情報を管理していません。同じ厨房で、卵・乳・小麦・えびなどを使った料理を作っています。食物アレルギーのある方は、ご来店の前にお電話で、使っている食材をご確認ください。
最後の一文で「電話で聞いてください」と書くなら、電話を受けた人が答えられる準備が要ります。答えられない日があるなら、この一文は入れず、「アレルギーのある方のお食事はお受けしていません」とはっきり書く方が誠実です。
管理する店の、一覧表の決まり
管理すると決めた店が一覧表を載せるときは、手引きの次の点を守ります。
- どの品目について情報を出しているか、範囲を書く。手引きの例は「本店舗における食物アレルギー情報は、使用原料において卵、乳、小麦、えび、かに、そば、落花生について提供しています」
- 見れば分かる食材も省略しない。オムライスの卵、えび天丼のえびも、表に印を付ける
- 混入の可能性を必ず書く。手引きは、混入の可能性を示さないのは避けるべきだとし、例として「そばとうどんをおなじ釜で茹でています」「エビと鶏肉を同じ油で揚げています」を挙げています
- いつの情報かを書く。手引きの表示例には「情報は〇〇〇〇年〇〇月〇〇日現在です」という注記が入っています
4つ目が、ホームページでは特に効きます。手引きは、Webの情報は常に最新にできるのが利点だとする一方で、最新でなければ誤食の原因になると書いています。メニューを変えた日に、表も直す。これを店の中で誰がやるか決めておかないと、ホームページの表だけが古いまま残ります。
当社がホームページを作るときは、表を載せる店とは「メニューの改定と同じ日に表を直す」ことを先に決めます。決められない店には、表は載せず、前の節の文を載せます。
「アレルギー対応」「〇〇不使用」と書くときも注意が要ります。手引きは、こう書くと、加工食品と同じ精度の管理をしているように受け取られるとして、精度についての注記を必ず添えるよう求めています。例文はこうです。
工場や店舗では細心の注意を払って意図せぬ混入の防止管理をしておりますが、調理等においてそれらを完全に防ぐことは困難です。最終的な“食べる”判断は、主治医のご指導のもと、お客様ご自身でされるようお願い致します。
店内のメニューに書く場合は、文字の大きさにも決まりがあります。アレルギーの表示は、メニュー名や価格の文字の50%以上の大きさにする、と手引きは書いています。
Googleマップには書かない
Googleビジネスプロフィール(Googleマップに出る店の情報)にも、メニューや説明文を書く欄があります。
当社は、ここにアレルギーの情報は書かないことを勧めます。 理由は2つです。
1つは、更新が追いつかないことです。ホームページの表を直しても、Googleマップのメニュー欄を直し忘れると、古い情報がそのまま残ります。
もう1つは、短い説明文では範囲と混入の注記が書けないことです。説明文に「アレルギー対応可」とだけ書くと、手引きが避けるよう求めている書き方そのものになります。
Googleマップには、ホームページのメニューのページへのリンクを置けば足ります。アレルギーの情報はホームページの1か所にまとめ、そこだけを直す。直す場所を1か所にすることが、古い情報を残さない一番の方法です。
電話や注文のときに聞く言葉
ホームページを見て来店する人も、最後は店員に確かめます。手引きは、聞き方についても書いています。
「避けてほしい食材はありますか」という聞き方は不適当だとされています。アレルギーと好き嫌いを混同する人がいるからです。代わりに「食物アレルギーのある食材はありますか」「医師から避けるように言われている食材はありますか」と聞きます。
東京都の多摩府中保健所は、事故を防ぐ3か条として、あいまいな回答をしない、最新で正確な情報を伝える、混入の可能性を必ず伝える、を挙げています。答えられないことを聞かれたら、「分かりません」と言ってかまいません。
まとめ
今日やることは1つです。店として、アレルギーの情報を管理するか、しないかを決めてください。 決めたら、その旨の1文をホームページのメニューのページに書きます。
表を作るかどうかは、その後で考えれば間に合います。
出典
- 外食等におけるアレルゲン情報推進検討会「外食・中食におけるアレルゲン情報の提供に向けた手引き」(平成29年6月30日、令和5年3月9日修正。管理する/しない、範囲の明示、混入の表示、文例、Webでの提供。2026-10-30に確認)
- 消費者庁「食物アレルギー表示に関する情報」(2026年4月1日 特定原材料にカシューナッツを追加)
- 三重県「飲食店のアレルギー表示」(飲食店の料理に表示の義務はない)
- 東京都多摩府中保健所「食物アレルギーについて」(事故防止の3か条)
- 日本フードサービス協会「外食等におけるアレルギー情報の提供について」
